ファッションは、子育てしながら働く女性のチカラになる!

働き方改革、女性の活躍推進というけれど、家事や育児が減るわけでも、女性の体力気力が飛躍的に向上したわけでもない。みんなどうやってこなし、何に悩んでいるの? やっぱりおしゃれもままならない? そんな実態を密着リサーチした。

ブラック上司(?)の元で育休後高速復帰した安井さんが、「ダイバーシティ推進室」室長になるまで

小学校4年生の娘さんを育てながら、「三井化学」人事部ダイバーシティ推進室室長を務める安井直子さん。

安井さんの勤める「三井化学」は、明治45年に三井鉱山が科学事業を始めたことに端を発し、これまで複数の会社が生まれては合併して、1997年より現在の形になった。デニムに使われる「インジゴ(インディゴ)」の開発や合成アンモニアの生産などに始まって、スニーカーにサングラス、車のバンパーに歯ブラシ、ハウスクリーナーのスプレーボトル…と、どんな家にも必ずある馴染み深い品々の「素材」を作り出している。

「三井化学」人事部ダイバーシティ推進室室長を務める安井直子さん

そんな社内で現在、安井さんが籍を置いているのが「ダイバーシティ推進室」。もともと「生物好き」のリケジョだった安井さん、新卒で同社に入り、長らく農業用の殺虫剤の研究に携わってきた。その後海外担当として本社異動が決まったまさにその夜、運命のいたずらか妊娠が発覚し、急遽国内担当に。1年間の産休・育休を経て、研究管理や経営企画の部門に携わることになった。「当時は超男職場。取引先との懇親会では妊婦の私がいてもみんなタバコはガンガン吸うし、仕事量もハードでしたね。復帰後も夕方17時に“明日の朝までにこれできるよね”と頼まれたり(笑)。今思うと超ブラックですよ! でも10年前はそれが当然という風潮でした。もちろんストレスもありましたけど、否応なく全力で走らされたことで、育休のブランクを感じずに職場のペースに戻れた面もあります。最近になってから当時の上司には、“あの頃はごめんね! 1歳の子供さんがいたのにずいぶん働かせちゃったね”と謝られました(笑)」

安井直子さん

安井さんにとってそんな「働き方」の常識が大きく変わったのは、出向で2年半を過ごした、文科省での経験だ。ここでインクルージョンやダイバーシティといった新しい価値観を学んだという。「育児と介護が同時進行する“ダブルケア”という言葉もこのとき初めて知りました。自分の両親はまだ元気でしたが、この先を考えると実家の近くに住んだ方がいいと考え、千葉に家を建てて移り住みました。通勤は片道1時間半になりましたが、泊まりの出張の時は両親に子供を預けることもでき、その点でもよかったかなと思っています」。2年半の文科省勤務を終えた安井さんは、「ダイバーシティ推進室」で新しい働き方を模索する旗振り役となったのだった。

乳幼児期より実は深刻な、10歳以降の子育てと仕事の両立

安井さんの1日を追ってみよう。朝は5時〜6時台に家族が起きて1日が始まる。7時20分ごろ娘が登校、忘れ物だなんだと帰ってくる様子がないのを見計らって安井さんも7時半ごろ出社。約1時間半の通勤を経て、勤務に着くのは9時15分ごろ。「15分ではありますが、毎朝フレックスという扱いにしています」。3交代制の看護師のご主人とのスケジュール管理はダイニングに吊るしたカレンダー上で行い、勤務時間中の緊急連絡はLINEメッセージで行うという。

安井直子さん

安井さんの自宅近郊は、いわゆる「小4の壁」がない、小学校卒業まで学童保育サービスを受けられるラッキーな地区。娘さんは学校が終わると自分で学童や塾・お稽古事へ向かう。学習塾や英語塾に週3回、そしてバイオリンとドラムと水泳にそれぞれ週1回通っているという。「学童の日は18時ごろ、塾やお稽古のある日は19時半ごろ帰りますが、そのお迎えはほとんどが定時で帰れ、職場が家に近い夫。夫が飲み会や残業のあるときは私がお迎えに行きます」

学童があるとはいえ、小4の子をもつ親がすべきタスクはなかなか多い。「保育園時代は“働いているお母さん”を前提に何事も考えてくれていましたが、小学校はそうではないので、働く親にとってはスパルタ社会です(笑)。明日トイレットペーパーとラップの芯を持ってくること”と書かれた連絡ノートを夜見せられてもね…(笑)。学校や塾、お稽古事の宿題も見なくてはいけないし、いじめや不登校など、思春期ならではの問題に直面する可能性もあります。受験を迎える子もいる。当社に限らず、会社の制度は乳幼児期の親に対してはずいぶん手厚くなりましたが、実は子供が10歳以降になったとき、育児のためにキャリアを捨てる人が少なくないように思います」

「イオンのフードコートは我が家のダイニング!」家族のハッピーのために、こだわりも取捨選択

安井さんのご主人は6歳年下の看護士。安井さんの復職と入れ替わりに彼が半年間育休を取得したことで、家事や育児も上達し、ママ友と仲良くなったり、復職後も平日の家事を積極的にこなすなど、とても頼もしい存在になっている。娘さんとも仲良しだ。「帰宅するとキッチンはピカピカに片付いています。私は洗濯やアイロン、トイレやお風呂の掃除を担当。それ以外の家事は、生協の宅配、食洗機やルンバなど、使えるシステムや道具に頼っています。私が家事をするのは大体娘が眠ってからだから、娘に“ママは家事何にもしてない”って言われてちょっと癪なんですが(笑)」。仕事と育児の両立を果たすために、外食にも罪悪感をもつことはしない。「家から徒歩2分のところにイオンがあるんです。だからイオンのフードコートの利用率がむちゃくちゃ高い!。もはや我が家のダイニングです(笑)。その代わり朝ごはんをバランスの良い食事にするように心がけていて。だいたい世界を見ても、朝も夜も外食っていう国もあれば、自炊といっても冷凍食品や瓶詰め、という国も多い。毎日手作りの手の込んだ料理を出さなくてはという価値観に縛られる必要はないと思うことにしてます。それよりも家族が仲良く話せる時間がある方がいいかなと」。娘さんが小さい頃は週2回ほど、ベビーシッターサービスも利用していたという。「会社の福利厚生でシッター料の2/3くらいを負担してくれていたんです。それでシッターさんに“くもん”の送り迎えをお願いして、用意しておいた食事を温めて食べさせてもらったり、ピアノやバイオリンを教えてくれたりと、すごくお世話になりました。プライバシーに対する距離感みたいなものの相性を見る必要はありますが、彼らはシッティングのプロ。子どもにとってもシッターさんと過ごせたことはすごくよかったと思います」

もっと子どもと過ごしたくて仕事を辞めたいと思った日も。けれど「ママが自慢」という娘の言葉が励みに

今ではすっかり自立した(?)娘さん。ママは宿題を早くしろなどとうるさく言うため、ママが早く帰ってくると“ちっ”と舌打ち、“今日は遅くなる”と言うと“ラッキー!”と返事が返ってくるほどに。安井さんが遅い時間に帰宅すると、早朝勤務のパパと娘、そして2匹の犬たちがシングルベッドのなかにぎゅうぎゅう詰めになって寝ていることもあるそう。「こんなに娘とパパがベタベタしている時期は限られているでしょうから、貴重ですね」

とはいえ、学校の提出物や準備物系はママが頼り。夜、帰宅するとダイニングテーブルに、イラスト入りのお手紙が置いてある。“図工の道具を用意してください、詳しくは教科書の○○ページを見て”といった指示書(笑)のこともあれば、“ママおつかれ様!!つくえに三色だんごあるよ!よかったらたべてね”などの愛の(?)メッセージの時も。その絵手紙は全部取ってあるそう。

イラスト入りのお手紙

子育てと仕事のバランスを考えるのはとても難しい、と安井さん。「できることなら、もっとたくさん子どもと過ごしたい。子育ての時間は今しかないのに、なんてもったいないことをしているんだろうといつも思います。でも一方で、仕事もできる限り頑張りたい。自分の中でのその板挟みに遭います。でもあるとき、ふと娘に“ママ室長の仕事、辞めたいな”と呟いたら娘が驚いたように“えっなんで?私の自慢なのに!”と。びっくりしましたね。友達の間でお母さんがどんな仕事をしているかという話になって“女性の活躍を応援する仕事の室長なんだよ”と言えることは、娘にとって嬉しいことだったんだなと。会社で家族に職場を案内する行事があって、娘に私のデスクを見せたことも印象に残っていたみたいで。娘の言葉に、ああ、やっぱりお仕事頑張んなくっちゃ、と思いましたね」

ただ「楽な格好」で働くためのデニムではなく、社内の風土を変えるきっかけになればいい

今回DENIM FRIDAYの導入を検討している「三井化学」。けれどどのように導入するかに頭を悩ませているという。「理系の会社ですし、もともとおしゃれな会社じゃないので、ブルージーンズはともかくとして、カラーデニムならとやかく言う人もいないし、もっと言えばノーメイクでも気づかれない、要するにファッションに関して無頓着な人が多い会社なんです(笑)。何千人という規模の会社なので、部署によって、内勤と営業、服装に安全性が求められる職場などドレスコードにばらつきがあることも高いハードル。それにDENIM FRIDAYが間違った形で広まってしまって、ダサーい集団になってしまったらどうしよう、とか(笑)。服装のことをとやかく言われたくないという社員もいますし」。安井さん自身、服装に関しては、特に子供が小さかった頃は、とにかく楽で汚れが目立たず、家で洗濯できるノーアイロンのもの、そしてコーディネイト要らずのアイテムが中心だったという。「一日中デスクワークの日は、窮屈な服を着たくない。ゆったり過ごせるというのも大事なポイントですね。その点、デニムは大合格。DENIM FRIDAYを導入することでもっと育児も仕事もストレスなく駆け抜けられる服と出会えるようになったらいいですね。ただし近所にゴミ捨てに行くようなワンマイルウェアにならないよう注意が必要。DENIM FRIDAYは、ただ楽な格好を許すのではなくて、社員同士のコミュニケーションや社内の雰囲気に変化が生まれたり、働き方そのものに対する会社の風土に新しい価値観が見出されたりすることを目指したい。現在、新卒採用の真っ只中ですが、若者に向けても会社のこれまでと違った魅力をアピールできればと思っています」

社員同士のコミュニケーションや社内の雰囲気に変化が生まれた

取材当日は、GapデニムスペシャリストスタッフのDenim ADDICTがスタイリングしたコーディネイトで1日過ごしてもらった。「とにかく着心地がよくて、動きやすくてシワも気にならないのがいいですね! やっぱり着心地は大事。それに周囲からも私服みたいと言われるぐらい馴染んでいたのが嬉しいです。それでいてシャキッとしたところもあって働きやすいと感じました。被るだけのブラウスに、ウエストゴムのパンツはともにボタンがないのも重要なポイント。仕事に育児に追われていて、着用する時間も労力も惜しいですから(笑)」

ボトムスは、この春夏のトレンド素材でもあるリネンのワイドパンツ。クロップ丈でシューズを選ばない上、動きやすさも抜群。定番のデニムジャケットで、動きやすさと清潔感を両立したスタイリングに。これぞ、仕事と育児を両立する忙しい女性にもぴったりのオフィスカジュアルだ。

休暇制度や時短・在宅などの働き方を導入するなど、働く「時間」や「場所」では育児中の社員に向けて充実した制度が構築されてきた三井化学。これからは働く「服装」でどんな変革をもたらすのか、楽しみだ。

*着用アイテムは全てGap

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