AI研究者がDENIM FRIDAYを語る!

一貫して「AIを社会課題に役立てること」を目指し、大学院時代には18本もの論文を書いたという石山 洸氏。リクルートAI研究所所長を経て現在はベンチャー企業「デジタルセンセーション」でAIを用いた認知症ケアに取り組んでいる氏が「DENIM FRIDAY」に未来を感じると語ってくれた。その理由は? AIとデニムにどんな関係が?

「AIで世の中の問題を解決する」。研究者・石山氏のビジョン

「DENIM FRIDAY」を体現するかのように、ラフなTシャツ姿で取材に現れた石山 洸氏。彼は東工大大学院を経て「論文ばかり書いていても世の中を変えられない」と考え、リクルートに入社。社内で「RIT(Recruit Institute of Technology/リクルート人工知能研究所)」を設立、初代所長として貢献した人物だ。

ビジネスにAIをどのように活用していくのか。石山氏はこう語る。

「例えば人材分野でAIを取り入れるとすると、採用の1次試験の合否判定を行うことや、入社する前の段階でその人の5年後の給与を予測することもできる。さらにその人がどんなチャレンジをすれば、予測された5年後の給与を上回る給与に到達できるかを提案することだってできるんです」。

これはすなわち、AIが予測した未来をAIがよりポジティブに変化させ、人間とともに成長していくことを意味する。AIが普及すれば人間の仕事がなくなる、シンギュラリティの時代が到来するなど、AIにまつわる想像はネガティブなものも少なくないが、石山氏が思い描く未来図は人間の可能性をより大きく広げるイメージだ。

そんな彼が、今年3月にリクルートを離れ、新たなステージに選んだのは、静岡大学から生まれたベンチャー企業「デジタルセンセーション」。認知症の方のケアを中心とした介護の分野にAIを導入している会社だ。特に介護される側の尊厳を尊重したケアを行うための、「ユマニチュード®︎」という、フランス生まれの介護教育プログラムを普及させることを目指している。

石山氏が所属する「デジタルセンセーション」では、この「ユマニチュード」の指導にAIを取り入れている。

「ユマニチュードでは、『見る』『触れる』『話す』『立つ』という4つを主軸にその手法を開発しているのですが、当然これらは介護の際、必ず行っていることだと思いますよね。でも、ただ行うのではなく、それらの動作を『どのレベルで行うのか』がすごく重要なんです。例えばユマニチュードのメソッドで『見る』というのは、正面から20cmの距離まで近づいて相手の瞳を捉えるんです。」。

石山氏に促され、取材スタッフ同士で実演してみると、こんなに近い距離での接触が必要なのかと驚く。「実際にやってもらうと、そのラグジュアリーな感覚がわかると思います。ちょっとした違いがものすごく重要だと気づきますよね」。

対人コミュニケーションや職人技…AIが「指導者」として活躍する日

石山氏が所属する「デジタルセンセーション」では、この「ユマニチュード」の指導にAIを取り入れている。

「認知症ケアの手法はたくさんあるのですが、同じことをしているつもりでも達人と初心者ではやり方に差が出るし、その結果、認知症の人が受けられるサービスはまるで違ってきてしまいます。達人と初心者では何がどう違うのか。その差を埋めるのが指導者の仕事ですが、達人の目に見えているものが初心者には見えていない、といった内容を伝授するのはとても難しい。ここにAIを導入することで、介護者のアクションをデータとして蓄積し、その『重要な微差』をクオリティ高くアウトプットし、達人の『技』を初心者に伝えられるようになるのです」。

目と目の距離、話しかけ方、手の動きなどを細かく認識し、動画を通じてAIが解析し指導してくれるという仕組みだ。

「近い将来必ず訪れる超高齢化社会では在宅ケアの必要性が高まり、介護はすべての人にとって必須の技能といってもいい状況が予想されます。そのための指導者の量的・質的不足をAIが補うことができるのです」。

また介護以外の分野でもこのシステムは活用できるはずだ、と石山さん。「接客販売、訪問営業などの対人コミュニケーションから、製造業などでの『ラスト1マイル』の職人技など、さまざまな領域に応用できます。まさに未来の働き方改革の一助になり得ると考えています」。

デニムで働くことによるパフォーマンスへの影響はAIで検証できる

このような研究をしている石山さんに、「DENIM FRIDAY」はどう映るのだろうか。

「介護の分野でわかったことは、眼球の動きひとつ、人が肌に触れる面ひとつで、相手に与える影響はまるで変わるし、その結果、介護をする人、すなわち働く人の心理的・肉体的負担も大幅に変わるということです。同様に、デニムで働くかスーツで働くかで、介護現場と同じような差も当然生まれるはずだと思い、とても興味深いプロジェクトだと感じました」。

デニムで働くかスーツで働くかで、介護現場と同じような差も当然生まれるはずだと思い、とても興味深いプロジェクトだと感じました

さらに、服装によるパフォーマンスの差もAIで細かく分析することが可能だという。

「仕事のパフォーマンスというのは、『バイオロジカル(生理的)』『サイコロジカル(心理的)』『ソーシャル(社会的)』という3つの階層が相互に影響していますが、デニムで働くこととスーツで働くことでどんなパフォーマンスの違いが出るかも、それぞれの階層で分析できるでしょうね」。

つまり、デニムで仕事をすることで呼吸や姿勢にどんな変化が起きるのか、気分やモチベーションにはどんな影響を与えるのか、そして上司やクライアントとの関わり方はどう変わるのか、といったあらゆる観点から、AIを用いてパフォーマンスを検証することが可能という。この点に、石山さんの研究者マインドが疼いているらしい!

「例えば僕は気道が狭いので、ネクタイを締めているのと締めていないのとでは、生理的なパフォーマンスがまるで違います。一方、日本人は総じて良くも悪くも『人と同じ』であるほうが心地よいと感じる傾向があるので、みんなが同じようなスーツ姿、ネクタイ姿だと安心する人も多いのでしょう。それは先程の話で言えば心理的なものと社会的なものが影響し合っているということ。さらに言えば、江戸時代の連帯責任の『五人組制度』など、歴史的に同調圧力が働きやすい環境で生きてきたために、民族として遺伝子レベルで抑圧されているということを推察している研究者もいます。しかし、この先未来永劫ずっとそうかといえばそうではない。これからの時代、イノベーションにはふたつのケーパビリティ(能力)が求められます。それは『フィクションをつくる力』と『フィクションをノンフィクションにする力』。日本人は総じて、後者は強いけれど前者が弱い傾向がある。今までと違う考え方を産み出す力が弱いのです。その部分を伸ばすトレーニングとして、あえて『今までと違うやり方を選択する』ということを試みる価値はあると思います。そのひとつがビジュアル。ファッションを変えることで、ケーパビリティにどんな影響が生まれるのか、という実験はとても興味深いですね。そのためには、顕著にデータが取れそうな、何十年もスーツで働いてきたおじさんで検証すると、驚くような違った良い側面が見えてくるかもしれません(笑)」

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