ファッションが変える! 新しい時代の「働き方」

食品、流通、消費財…さまざまな分野をリードする大企業の人事担当者が語る「働き方改革」。各社の実情と、将来的なビジョンとは?

「働き方改革」最初の一歩は労働時間の変革から

味の素KK 理事 グローバル人事部次長 髙倉千春さん(以下髙倉) 味の素では「時間管理」という面で革新的なことをしていると思う。水曜は5時には会社を出ること、とか。それ以外の曜日でも7時が最後。それ以上いるとイエローカード。

ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス 取締役人事総務本部長 島田由香さん(以下島田) それは帰れ帰れって誰かが言うの?

髙倉 4時30分にキンコンカンコンとチャイムが鳴って。それが聞こえたらみんな急いで片付けを始めてエレベータに乗るっていう感じ。間に合わないと階段をダッシュで降りる。社長の強い思いを受けて、「頑張んなきゃ!」って、積極的に働き方改革に取り組んでいるんです。

味の素では「時間管理」という面で革新的なことをしている

サントリーホールディングス グローバル人事部部長 田中憲一さん(以下田中)■トップ自らが旗を振ることは大事ですよね。

髙倉■まぁ、まだうちは最初のステップ。早く帰るようになって手に入れた時間で得たことを仕事に反映していくとか、さらに次の事を考えなきゃいけないですね。

 

業種や会社によって異なる、働き方改革

田中■サントリーの場合、制度面で言うと、労働時間も勤務場所も柔軟性が高い。大きく制度が変わったのは2010年からですね。もともと新しいことに取組んだり色んなことにチャレンジする社風があったからこそできたと思います。

島田■「やってみなはれ」だもんね。

田中■そうです。「やってみなはれ」文化。盛り上がると火がつくんですよ。

ギャップジャパン 人事部シニア・マネージャー 岸本しのぶさん(以下岸本)■フレックスはみんな使ってますか?

フレックスはみんな使ってますか?

田中■フレックスやテレワークを有効に使う社員は増えています。家で仕事ができると、家族との時間がちゃんと取れるっていう声は多いですね。それに仕事の仕方全般として、生産性を高めようという意識が確実に高まっていると感じます。

 

−−三越伊勢丹ホールディングスの場合は?

三越伊勢丹ホールディングス グローバル人材本部人事企画部部長、藤森健至さん(以下藤森)■弊社はすっごく遅れているんです。店頭商売をやっていると、早く帰るのは無理!っていう考え方があって。でも一昨年、バイヤーについてはノー残業を実践しようということになり、部長が鍵当番をやって、定時帰宅を推奨するように。それに加え、朝8時半からと夜も8時半から、得意分野をもつ社員が講師となり、社員にレクチャーを行う学びの場をつくりました。

田中■それ、参加される方の評価がすごく高いんですよね?

藤森■そう、5点満点で平均4.5点。

島田■早く帰ろう!っていう雰囲気は生まれた?

藤森■そこまではまだまだ。目標は3年後です。あとは店頭で販売に携わるスタッフがノー残業や時短勤務の恩恵を受けられないので、他のメリットを考えなくちゃいけないということも課題ですね。

ギャップは2008年から「サマーアワーズ」として、7月から9月上旬に本社は午後1時以降はオフィスを閉めちゃうとか、労働時間についての取り組みを始めていましたね。

−−ではギャップの場合は?

 

岸本■ギャップは2008年から「サマーアワーズ」として、7月から9月上旬に本社は午後1時以降はオフィスを閉めちゃうとか、労働時間についての取り組みを始めていましたね。でもやっぱり三越伊勢丹ホールディングスさんの場合と同様に、最大の難題は店舗スタッフの時間管理をどうするかということ。そこで、店舗スタッフにも半日勤務の日を設けるようにしました。最初の1〜2年は「必要なときに社員がいない」と言う人も少なくなくて。でも、そこはコミュニケーションや信頼関係を構築することでカバーできると伝えていきました。そこからわかったのは「自立」の大切さ。信頼を下支えするのは責任であり、自立。結果を出すためには自立していないといけない。それから、クリエイティビティを育てるのも大事ですよね。お客様とのコミュニケーションを図るためには、売る服のことだけ知っているんじゃダメ。美術館とかいろんな場所に行って、感性を磨いておかないと…。

 

藤森■共感力だよね。

共感力だよね。

岸本■そう。自由に使える時間を、そういうことに役立てているという社員は多いです。最初の2年は不平不満もあったけど、その後はだいぶ浸透しましたね。

島田■やっぱり3年かかるよね、浸透するのに。

 

ファッションは、働く人の能力や可能性を広げる大事な要素

島田■弊社では去年の7月から「新しい働き方」ということで、「WAA」という取り組みを始めたんです。「Work from Anywhere and Anytime」。どこで働いても何時に働いてもいい、という考え方。名古屋、大分をベースに仕事する社員もいますし、旅行中に仕事しても全然構わない、1分でも仕事したら仕事したことになるの。ハワイ旅行に行っててもいい。この先も、もっとどんどん新しい働き方を取り入れていきたいと思って、いろいろなアイデアを温めています。ジョブシェアリングもしたいし、定年もなくしたいし! 一人の人の能力とか才能とか可能性を一社だけ使うなんてもったいない。だから兼業や副業があたりまえの世の中にしたいし、それをもっと社会的な仕組みとしてサポートできたら良いかなと思っています。1人の人をここにいるみんなの企業で採用するとか(笑)。

ジョブシェアリングもしたいし、定年もなくしたいし! 一人の人の能力とか才能とか可能性を一社だけ使うなんてもったいない。

岸本■そうなると、何を着て会社に行くかも個人の裁量になるよね。

島田■ファッションってやっぱり気持ちが上がるじゃない? それはとても大事なファクターだと思う。お気に入りの服を着ていれば気持ちいいし、それが仕事のクオリティを左右することだってあるんじゃないかな。うちの会社はシャンプーやボディソープなどを扱っていて、品質やパッケージや香り…さまざまな形で人々に「気持ちよさ」「快適さ」を提供することで成り立っている。これはうちに限った話ではなく、ビジネスって本当は全て「気持ちよさを提供する」ことの上に成り立っていると思う。誰かの役に立つ、誰かを気持ちよくする。それが仕事の基本だと思うし、全部自分に返ってくるんです。このことを私たちは人事のリーダーとして、会社のリーダーとして伝えていかなくちゃいけない。それで全ての人が気持ちいいって思う世の中になったらいいな。そしたら戦争だってなくなると思う! 自分が満たされていたら、人を攻撃する必要なんてないもの。

岸本■弊社には、“Do more than sell clothes(洋服を売る以上のことをしよう)”という言葉があります。洋服を販売するだけでなく、社会やコミュニティに貢献してポジティブなサイクルを生み出そうという考えです。それぞれの人が自分に合った働き方を選べて、幸せな生活を送れるように行動を起こしたいと取り組んでいます。そこで始めたのが「DENIM FRIDAY」というプロジェクト。まだまだ企業によってはデニムに対する偏見とか、スーツさえ着てればOK、という考え方もある。障壁はあります。でもこれまでも、歴史が変わるときって必ずファッションも大きな変化を迎えていたという事実があります。私たちはこのプロジェクトを通じて、たくさんの企業の方々と一緒にこの変革を成し遂げていきたい。組織の枠を超えて、新しい時代の働き方を実現するために、さまざまなアクションを起こしていきたいと思います。

髙倉■日本の人口も減っていくし、クリエイティブな発想がどんどん求められ、イノベーションが必要になってくる時代。新しいことを生み出すことが非常に大事というなかで、「新しいことを生み出せる環境」を作っていかないといけない。そう考えると、こんな硬い格好していたら、風土的に新しいものなんて生まれないですよね。あるチームから少しずつ、服装はカジュアルでいいよ!って始めてみるとか、そういう場作りもひとつあるかなと。いつかは弊社も「デニム解禁」かな(笑)。

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